idle talk

「この間の、聞いた?」
「聞いたって言うか、聞こえたって言うか」
「出るに出られないし。物音も立てられないし」
「後10分続いたら、スパナ投げる予定だったのよ」
「人騒がせな連中だよ」
「いいじゃない。若い二人の道ならぬ恋。縋れるものは互いの手だけ…!」
「道なんて気にして無いわよあの二人」
「そうよね。この世に居るのは二人だけ、な勢いだったもんねー」
「ねー。ココがみーんーなーの格納庫、って自覚ゼロっすね。」
「でも最近の子ってあんな複雑な恋愛するもん?『お前が好きだー!あたしもー!』じゃないの?恋愛って。何よあの超複雑そうな背景。ヘヴィだわ」
「お互い複雑そうな過去とか背景とかありそうな雰囲気ですよねぇ。」
「って言うか、本当にアルト君の実家、凄いんですよね?よく考えたら、シェリル=ノームとは違った意味での有名人なわけですし」
「え。そうなんですか!?」
「そうなんだってさ。全く路線は違うけどね。一応、芸能人?だよね?」
「あの顔で、今も現役で舞台立ってたら、マスコミに引っ張りだこだったんじゃないかしら。出来すぎよ、あの顔。腹立つ」
「ひょっとしたら、簡単には会えない人、だったりしたわけか。」
「早乙女って言ったら、そっちの古典芸能ではダントツ有名一家。アルトのお父さん、イベントとか文化奨励の場には、必ず呼ばれてるわよ。」
「ってー事は、だ。お姫さん、大事な跡取りむす…息子なわけだから、少尉、やばいんじゃねぇの?」
「何が?」
「うちの息子は嫁にはやらん!って親父が怒鳴るのが、筋だろ」
「息子が嫁って…どんな筋よ一体。」
「あーでもそれ分かるかも知れません。アタシ、アルトさんのお父さんテレビで見た事ありますよー!凄い怖そうでした。雷親父って言うんですよね、あぁ言うの」
「うひゃひゃひゃ!じゃ、ミシェル少尉は、殴り飛ばされるの決定だな」
「あの男、大人しく殴られるようなカワイイ性格じゃないわよ」
「反撃っすか?」
「先制攻撃」
「あぁそれっぽい。で、絶対認めん、とか言われて手に手を取って、銀河の彼方に逃亡!」
「して、どうすんのよ。何の解決にもなってないじゃない」
「そこで現実に立ち返ったらつまらないでしょ。いいのよ、曖昧なエンディングで!」
「ドラマならまぁそれで良いけど、普通に考えて、難しそうな展開よねー。アルト君、永遠にパイロットなら、何とかなりそうだけど。うち入ったこと、オープンにしてないんでしょ?」
「成人しちまえば、こっちのもんだろ?親が反対してたって」
「そーお?親子の関係って、難しいのよ。うちだって未だに軍隊なんて辞めなさい!って煩いし。S.M.Sだっての」
「まぁ言われますよねぇ。普通は。死地に送り出すような顔して、反対しますよね」
「多少は軍関係に縁があれば、そうでも無いんですけどね。どうしても、軍=戦争=戦死みたいで…」
「ほらね、それで行くと、アルト姫の所は、軍ともパイロットとも縁もゆかりも無い関係でしょ?おまけに実家を家出みたいな形らしいし。もめるわよー。今は何か学校の飛行訓練だとかで、色々とごまかしてるみたいだけど、そのうちそう言う手も使えなくなりそうだし」
「怪我とかした時とか、揉めそうですよね。人ん家の息子に何さしてるんだー!みたいな展開?」
「S.M.Sが訴えられるとか?」
「でも入隊の規定年齢に達していて、個人の意思確認もあってその上で契約書にサインして、だから。そもそも入隊以外の逃げ道の無い機密情報をがっつり本人が率先して、知っちゃったわけだしね」
「って理屈が通じるなら良いんですけど」
「あーそうか。頑固親父」
「そうそう。そこです。」
「全く見知らぬ相手なのに、気が重いわね。恐るべし親父」
「って言うか、直接対決するのは、お姫さんと、少尉と…あーオズマ隊長ですかね?」
「えー?隊長は駄目なんじゃない?ほらランカちゃんとの事なんて、そのまんま、アルト君とお父さんの関係じゃない。絶対、強く出れないわよ。あれだけ大反対だったもの」
「それいえてんなぁ…」
「お姫様は親父さんと対決しても埒が明かなさそうだし…だから、未だに不仲って言うか、そう言う状況なんすよね?」
「となると少尉か。やっぱり、肉弾戦に話が戻るんだけど」
「冗談。普通に考えて少尉が勝つだろ」
「穏便な話し合いは?」
「それ、不可能っぽくないですか?」
「少尉、笑顔で暴言吐きそうですよねぇ。」
「アルト君ゲットの為なら、何か本当にあくどい事しそう」
「俺としては姫の家族なら仲良くしたいんだけどね」
「「「「「「「少尉!?」」」」」」」」
「やぁ。面白そうな話をどうも」
「ど、どうも」
「俺は別に平気だけど、姫が聞いたら、俺と口利いてくれなくなりそうだから、そう言う話は人目の無い所でお願いします」
「…あんたが、こんな所でいちゃつくのが悪いのよ」
「公序良俗に反しますー!」
「てっとり早く、俺と姫の関係を証明しておけるかと思って」
「…確信犯っすか」
「まぁそうかな。何かと皆に気を使ってもらったみたいだけど、あれは俺のものだから、ご心配なく」
「……」
「それじゃあ」
「「「「「「「…………」」」」」」」」
「何か凄くムカツクわね」
「アルトって、少尉に騙されてんじゃないですか?」
「さぁ。分かってそうな気もするけど?」
「何よ!結局、あの馬鹿っぷるに踊らされただけ!?」
「でしょうねぇ」
「いーやー!何でアイツラだけ青春してんのー!」
「それが、俺達には無い若さってもんですよ」
「死ね。お前なんか死んでしまえ!」
「えぇ!ちょっ!」